高齢化が進む中、要介護者や認知症患者の増加に伴い、家族の負担を軽減する相続対策として「家族信託」が注目されています。
信頼できる家族に財産管理やその運用を任せるため、財産内容を第三者に知られることもありません。
この記事では、家族信託とはなにか基本的なことから、利用する際のメリットとデメリットについて解説します。
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家族信託とは?
家族信託とは、家族による財産管理の一つの手法です。
通常、銀行の預貯金や不動産などの財産はご自身で管理しますが、高齢や病気などで親自身での管理が難しくなる場合があります。
このような状況に対応するために、家族信託では、任意の家族を指名して財産の管理や運用、処分を任せられます。
判断能力のある家族に管理を任せることで、財産を無駄にせず効率的に管理することが可能です。
家族信託の具体的な仕組み
家族信託の仕組みについて説明します。
家族信託では、財産の所有者が家族に財産の管理を任せます。
関わる人物は「委託者」「受託者」「受益者」という3つの立場に分かれます。
●委託者:財産の所有者であり、信託を依頼する人物
●受託者:信託を受け、財産を管理する人物
●受益者:財産の利益を受ける権利がある人物(委託者本人が受益者を兼ねることも多い)
例えば、父親の財産を息子が管理する場合、委託者兼受益者が父親で、受託者が息子となります。
このように、3つの立場に分かれて財産の所有、利益の享受、管理の権利を分担します。
家族信託が注目されている背景
将来に備えた財産管理の方法はいくつかありますが、近年特に家族信託が注目されています。
その背景には、高齢化による認知症患者や要介護者の増加があります。
厚生労働省の「令和3年度 介護保険事業状況報告」によれば、2020年度末から2021年度にかけて、要介護者の認定を受けた人は約7.8万人増加し、約689万人に達しています。
また、2000年度には約256万人だった要介護認定者数が、2021年度まで年々増え続けています。
さらに、内閣府の「平成29年版 高齢社会白書」によると、2012年の認知症有病率は65歳以上の高齢者のうち約7人に1人でしたが、2025年には約5人に1人に増加すると予測されています。
このような高齢化が進む中で、要介護者や認知症患者の増加に伴い、家族の負担を軽減する相続対策として家族信託が注目されています。
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家族信託を行う6つのメリット
家族信託を行うメリットは多いです。
家族信託を行うことで得られる、さまざまなメリットを6つご紹介します。
メリット①委託者の判断能力に左右されない財産管理
家族信託が普及した背景には、親が認知症になった場合の財産凍結問題があります。
親が認知症になると、預金口座が凍結され、資金を引き出せなくなるほか、不動産の売却も難しくなります。
成年後見制度もありますが、親族が後見人に選ばれるとは限りません。
そこで、家族信託を利用することで、親が認知症になっても、財産の名義を子どもに変更し、広い裁量を与えることができます。
メリット②委託者の意向に沿った財産承継・事業継承
家族信託契約では、次に財産を受け継ぐ人を定めることができます。
さらに、その次の後継者まで決めることもでき、これは遺言ではできない家族信託の特有のメリットです。
メリット③不動産の共有によるリスク回避
家族信託は、親から相続した収益不動産を兄弟姉妹で共有する場合にも有効です。
一人が認知症になっても、他の兄弟姉妹に信託することで、管理が容易になります。
もちろん得られた収益は全員に分配されます。
メリット④柔軟な取り決めが可能
家族信託は、成年後見制度よりも柔軟性のある財産管理が可能です。
子どもに大きな裁量を与え、元の所有者の意向に沿って、柔軟な財産管理や運用ができます。
成年後見制度では、財産を減らさないことが重視されるため、将来の投資などが制限されます。
メリット⑤相続による負担軽減
家族信託により、相続時の遺産分割協議が不要になります。
遺産分割協議では全員の合意が必要ですが、相続人の一人が認知症の場合、手続きが難航します。
財産の承継方法を家族信託で決めておくことで、遺産の凍結や相続争いを防げ、相続対策としても有効です。
メリット⑥倒産隔離機能
受託者が破産しても、信託財産が差し押さえられることはありません。
信託財産は親のものであり、子どもの債権者は差し押さえることができず、これを「倒産隔離機能」と呼びます。
ただし、受益者が強制執行を受けた場合には、「信託受益権」が差し押さえられる可能性があります。
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家族信託を行う6つのデメリット
家族信託を検討する際には、デメリットについても理解することが重要です。
最後に、家族信託の主なデメリットを6つ紹介します。
デメリット①身上監護は成年後見制度が必要
家族信託には身上監護権がないため、親が施設に入居する際に、受託者が代理で契約を結ぶことは不可能です。
家族信託は財産管理の制度なので、施設費用を支払うことはできますが、入居契約の代理権はありません。
この場合、任意後見契約を結ぶことをおすすめします。
デメリット②受託者の選定が難しい場合がある
家族信託では、受託者が建物の管理義務を負います。
例えば、老朽化した建物で事故が起きた場合、損害賠償責任が生じ、信託財産以上の損害を賠償する可能性があります。
さらに、毎年の固定資産税の納付や財産状況の報告など手間も発生するため、受託者の責任は重く、引き受け手が見つからない場合があります。
デメリット③親族間の不公平感を生む可能性
一人の子どもを受託者にすると、他の子どもに不公平感を与えることがあります。
受託者は、信託財産に対しての権限を持つため、財産の収支が不透明だと疑念が生じることがあります。
これを防ぐためには、家族信託を始める前に家族会議を開くことが重要です。
デメリット④祖父母や両親の同意を得にくい場合がある
家族信託の主役である祖父母や両親の同意がなければ、信託は進められません。
制度の理解が難しく感じられることや、財産が受託者名義に変わることに対する不安から、同意を得にくいことがあります。
デメリット⑤節税効果が限定的
家族信託自体には相続税の節税効果はありません。不動産の名義は子どもに変わりますが、財産権は親のままです。
そのため、信託した財産の評価が変わることはありません。
相続発生時には、財産権は信託契約で定めた人に承継され、相続税相当額を納付する必要があります。
デメリット⑥遺留分侵害請求のリスク
家族信託契約で定めた後継者に財産権を承継する際、遺留分を持つ相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
これは家族関係を悪化させるリスクがあるため、遺留分が発生しない設計をしておくか、事前に家族会議を開くなど事前の相続対策が必要です。
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まとめ
家族信託とは、高齢や病気で財産管理が難しくなった親のために、家族が管理を代行する仕組みです。
財産の所有者である「委託者」、財産を管理する「受託者」、利益を受ける権利がある「受益者」という3つの立場に分かれ、財産の効率的な管理を行うことができます。
認知症や要介護者の増加に伴い、家族の負担軽減や相続対策として注目されていますが、成年後見制度や節税効果の限界、親族間の不公平感などのデメリットも理解した上で、制度を利用しましょう。
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